pixiv企画他、妄想イラスト、漫画もろもろ適当に書いてます
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桜華学園
桜華学園は都内にある、創設100年にも及ぶ歴史的な外観を持つ学校だ。
初等、中等、高等学校がひとつになった形式の学校で、敷地は広くない。生徒数が少ない分、噂はあっという間に広がる。
「知ってる?羽取先輩、怪我治ったらしいよ。」
女子の甲高い声は、聞こうと思わなくても耳に入ってくることがある。先ほど終わった科目の教科書を片付けながらも、それは嫌がおうにも耳についた。
「羽取先輩って、1週間前にチンピラに殴られて入院してたあの人?」
「そうそう。学校で禁止されてるバイトやってて、そのとばっちりで殴られたなんて運悪いよねー。」
心からの同情ではなさそうな、他人の不幸を楽しむ声色だ。
本当にくだらない。泉谷渓は、これ以上耳に入るのも不快だという風情で教室を出ていった。
かといって行くあてがあるわけでもない昼休み。家の者が用意してくれた弁当を持ち、いつものように屋上に向かう。どこにでも人というものはいるもので、屋上もまた例外ではない。もはや昼食をとり終わったのか、左のほほにバンソーコーを張った生徒が転がっているのが見える。
渓は、人の気配を避けるのがうまい。屋上に出ると決まって非常階段を一段降り、非常口と書かれた扉の傍らに腰掛ける。屋上の喧騒も、非常口の向こうの生徒たちの喧騒も、ここでは遠い。完璧とは言えないが静かな環境で、渓はやっと落ち着いて弁当の包みを開きだす。
「あ」
驚いたような声に視線を向けると、黒髪に黒い瞳の少年が立っていた。
「なんだよ、先客あり?いい場所見つけたと思ったのに。」
末っ子のような、拗ねた顔をする。見つけた、ということはこの少年も新入生なのだろう。
「ま、いいや。」
少年は去るわけでもなく、さして遠くも近くもない場所に腰掛けた。手に持っていた袋を広げ、購買で買ったのであろうエッグトーストをおもむろに食べ始める。渓の瞳に一瞬軽蔑の色が見えたが、感じさせる間もなく少年から興味を逸らし手を吹き始める。
「なに、お前の弁当すっげー豪華じゃん!これ一個頂戴。」
「あ、やめてください!」
止める間もなく、少年は渓の弁当箱に手を突っ込み煮魚を食べた。
「ん、うまい」
喜ぶ少年を横目に、渓は嫌悪感を隠さずに弁当箱を閉める。
「なんだ、食べないの?」
「あなたが手を突っ込んだ弁当なんて…食べられるわけないじゃないですか。もう、いらない。差し上げます。」
そう言って少年に弁当を押し付けて、渓はその場を去ろうとする。
「なんだよ人をバイキンみたいに!」
睨みつける渓の顔を見て、少年が何かに気付いたような顔をする。
「アンタ…泉谷の?」
泉谷の家系は、代々続く鬼祓いの術師の家系だ。顕著な特徴として、代々青い髪、青い目の子供が生まれる。渓もその例外にもれず、日に輝く水色の髪、青い瞳をしていた。泉谷の術師として特徴的な、霊力を込めた長い髪。中性的な顔立ちも手伝って、学生服でなかったら女の子と間違われることもあるだろう。
イエスともノーとも言わず振り返った渓に、少年は憎しみともとれる、憧憬ともとれる複雑な瞳を向けていた。
新入生らしく、胸にネームプレートをつけていることに渓は今更ながら気がついた。
『二宮』
大した感慨も抱かず、渓はその場を去った。
初等、中等、高等学校がひとつになった形式の学校で、敷地は広くない。生徒数が少ない分、噂はあっという間に広がる。
「知ってる?羽取先輩、怪我治ったらしいよ。」
女子の甲高い声は、聞こうと思わなくても耳に入ってくることがある。先ほど終わった科目の教科書を片付けながらも、それは嫌がおうにも耳についた。
「羽取先輩って、1週間前にチンピラに殴られて入院してたあの人?」
「そうそう。学校で禁止されてるバイトやってて、そのとばっちりで殴られたなんて運悪いよねー。」
心からの同情ではなさそうな、他人の不幸を楽しむ声色だ。
本当にくだらない。泉谷渓は、これ以上耳に入るのも不快だという風情で教室を出ていった。
かといって行くあてがあるわけでもない昼休み。家の者が用意してくれた弁当を持ち、いつものように屋上に向かう。どこにでも人というものはいるもので、屋上もまた例外ではない。もはや昼食をとり終わったのか、左のほほにバンソーコーを張った生徒が転がっているのが見える。
渓は、人の気配を避けるのがうまい。屋上に出ると決まって非常階段を一段降り、非常口と書かれた扉の傍らに腰掛ける。屋上の喧騒も、非常口の向こうの生徒たちの喧騒も、ここでは遠い。完璧とは言えないが静かな環境で、渓はやっと落ち着いて弁当の包みを開きだす。
「あ」
驚いたような声に視線を向けると、黒髪に黒い瞳の少年が立っていた。
「なんだよ、先客あり?いい場所見つけたと思ったのに。」
末っ子のような、拗ねた顔をする。見つけた、ということはこの少年も新入生なのだろう。
「ま、いいや。」
少年は去るわけでもなく、さして遠くも近くもない場所に腰掛けた。手に持っていた袋を広げ、購買で買ったのであろうエッグトーストをおもむろに食べ始める。渓の瞳に一瞬軽蔑の色が見えたが、感じさせる間もなく少年から興味を逸らし手を吹き始める。
「なに、お前の弁当すっげー豪華じゃん!これ一個頂戴。」
「あ、やめてください!」
止める間もなく、少年は渓の弁当箱に手を突っ込み煮魚を食べた。
「ん、うまい」
喜ぶ少年を横目に、渓は嫌悪感を隠さずに弁当箱を閉める。
「なんだ、食べないの?」
「あなたが手を突っ込んだ弁当なんて…食べられるわけないじゃないですか。もう、いらない。差し上げます。」
そう言って少年に弁当を押し付けて、渓はその場を去ろうとする。
「なんだよ人をバイキンみたいに!」
睨みつける渓の顔を見て、少年が何かに気付いたような顔をする。
「アンタ…泉谷の?」
泉谷の家系は、代々続く鬼祓いの術師の家系だ。顕著な特徴として、代々青い髪、青い目の子供が生まれる。渓もその例外にもれず、日に輝く水色の髪、青い瞳をしていた。泉谷の術師として特徴的な、霊力を込めた長い髪。中性的な顔立ちも手伝って、学生服でなかったら女の子と間違われることもあるだろう。
イエスともノーとも言わず振り返った渓に、少年は憎しみともとれる、憧憬ともとれる複雑な瞳を向けていた。
新入生らしく、胸にネームプレートをつけていることに渓は今更ながら気がついた。
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大した感慨も抱かず、渓はその場を去った。
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HN:
須々木ピコリ(すずきぴこり)
年齢:
157
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性別:
女性
誕生日:
1867/04/01
職業:
機械惑星の歯車あたり
趣味:
細工・お絵描き・惰眠をむさぼる
自己紹介:
ものぐさ。
※ご高齢の方や妊娠中の方、お子様など体や精神力の弱ってる方は閲覧の際充分に注意してください。
※本品は食品ではありません。食べないで下さい。
※お肌に異常の現れた場合は、ご使用をお控え下さい。
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