pixiv企画他、妄想イラスト、漫画もろもろ適当に書いてます
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先輩
羽取侑真は、とても真面目で気の弱そうな人。そう形容するのが一番しっくりくる、人畜無害な容姿と雰囲気の人だ。噂によると夜の風俗店で呼び込みのバイトの手伝いをしており、その時一緒に働いていた大学生の真木隼人への報復のとばっちりを受け、5月4日、つまり一週間前まで入院していたという。とばっちりで意識不明になった挙句、首なし死体を見つけたなど、ついていない人だ。
切りそろえられた黒い髪、きちんと着こなした制服からは、とても風俗店などの仕事を手伝っていたようには見えない。
幸いにして、羽取侑真は屋上で昼食をとるタイプらしい。いや、それとも教室や食堂で食べているとひっきりなしに生徒が来るから、比較的生徒の数が少ない屋上に来たのだろうか。まあそれでも質問に来る生徒はいるのだが、教室や食堂よりはましなのだろう。
退院後一週間経った今も、入院の話題で羽取先輩を訪ねる生徒は少なくないらしい。遠目にもいかにもうんざりした様子で質問に答えている様子がわかる。耳をそばだてずとも、殺人事件の目撃の様子は語ってないことは雰囲気で分かる。
どうやって聞き出そうか。それが問題だ。彼が殺人の目撃者だと知っているのは校内では渓だけだ。
『だんだん面倒になってきたな…』
事件の第一発見者だからとて、警察に聞かれて喋ることはもう喋っているだろう。警察がどこまで信用できるかはわからないが、彼が怪しいのなら、警察のほうから渓にそれとなく伝えるくらいあるだろう。第一、目の前の羽取という人間はあまりにも善良そうで、とてもじゃないが人間に危害を与えるようには見えない。
『さて、羽取先輩は視えるほうだろうか。』
桜華に来ている生徒は大抵が術師の素質を持っていて、ヒト成らざるものを見る能力を持っているものが多い。渓が使役する式神も、そういう素質のあるものには見抜かれることもある。もっとも、そう簡単に見破られない自信はあるが。
ものはためし。式神の寄代となる白い紙を丸め、息をかける。すると紙は一瞬空中でふわりと丸まって、かわいらしい白い犬の姿へ変化した。
阿吽の方割れ、阿だ。その姿が視えるものには、ポメラニアンのような白くてふわふわした犬に見えるだろう。式神は使役する人間によってその外見を変化させる。泉谷9代目の出す巨大な狼のような阿を思い出し、自分はまだまだだなと薄く思いながら、渓は羽取の横へ近づいた。
どうやら羽取は”視えない”ほうらしい。だからと言って出しっぱなしにして、他の生徒に感づかれるのも面倒だ。
『この匂いを覚えろ。』
渓が声を出さずに命令を出し、阿がうなづく。阿は羽取の周りをはふんはふんかぎまわり、渓の元へ尻尾を振って戻ってくる。どうやら臭いを覚えたようだ。
何気なく空を眺めてるふうを装って、阿を再び元の紙の姿に戻す。羽取先輩が登校の際あの高架下を通るのなら、途中までは渓と帰り道が同じだろう。放課後を待ち、生徒が散ってから阿に羽取を尾行させよう。渓本人が尾行るよりはいいだろう。
教室に戻ろうと立ち上がり、振り向くとそこにはまた二宮が立っていた。
「お前、今の犬…何?」
ばか。羽取の周りを囲んでいたゴシップ好きの生徒たちに聞き耳を立てられるのはマズイ。
「お前昨日だってそうだったろ、なんかアヤシイ札」
いいかけた二宮にラリアットを食らわす形で首に腕を絡め、そのままの体勢で校舎に戻る扉へと引きずる。
そのまま扉の中に入ると、外に漏れない程度、しかし怒りはばっちりとこもった声で渓が言う。
「いいですか、あなたに見鬼の能力があるのはわかりました。あなたが何者にせよ、これ以上僕の邪魔をしようとするなら」
「じゃ、邪魔なんてしてねーだろうが!昨日も今日も一昨日もちょっと話かけただけで」
「それが邪魔だというのです。」
ピシャリと言い切る。
茫然と、少し怒ったように困惑した二宮を残して、渓はその場を去る。
二宮。思い出した。
最初の文字に いろはにほへと を冠する術師の集団、【匂色機関】その筆頭泉谷。
続く陸原(ろくはら)、蛇草(はぐさ)、二宮(にのみや)、焔村(ほむら)、戸木(へぎ)、鳥落(とりおち)
…第四句目の術師、二宮家。
術師を代表する家系でありながら、欲望に走り敵である鬼の娘を娶った恥知らずな家系。
割とどこにでもある苗字のため、あまり意識していなかった。あの少年、二宮に術符が反応したのは、その鬼の子孫だからだ。鬼をせん滅する術師を養育する桜華学園に、鬼の血を引く生徒を入学させるなどとんでもなくばかばかしい、間違った行為だ。
二宮、彼がその二宮なら、確か彼の兄も教員としてこの学校にいるはずだ。
もし彼が僕の邪魔をするようなら、僕は二宮の血筋を許さない。第二句目、陸原の血を引く校長の思惑がなんであれ、筆頭泉谷の名にかけて---彼らを永遠にこの学園から追放してやる。
切りそろえられた黒い髪、きちんと着こなした制服からは、とても風俗店などの仕事を手伝っていたようには見えない。
幸いにして、羽取侑真は屋上で昼食をとるタイプらしい。いや、それとも教室や食堂で食べているとひっきりなしに生徒が来るから、比較的生徒の数が少ない屋上に来たのだろうか。まあそれでも質問に来る生徒はいるのだが、教室や食堂よりはましなのだろう。
退院後一週間経った今も、入院の話題で羽取先輩を訪ねる生徒は少なくないらしい。遠目にもいかにもうんざりした様子で質問に答えている様子がわかる。耳をそばだてずとも、殺人事件の目撃の様子は語ってないことは雰囲気で分かる。
どうやって聞き出そうか。それが問題だ。彼が殺人の目撃者だと知っているのは校内では渓だけだ。
『だんだん面倒になってきたな…』
事件の第一発見者だからとて、警察に聞かれて喋ることはもう喋っているだろう。警察がどこまで信用できるかはわからないが、彼が怪しいのなら、警察のほうから渓にそれとなく伝えるくらいあるだろう。第一、目の前の羽取という人間はあまりにも善良そうで、とてもじゃないが人間に危害を与えるようには見えない。
『さて、羽取先輩は視えるほうだろうか。』
桜華に来ている生徒は大抵が術師の素質を持っていて、ヒト成らざるものを見る能力を持っているものが多い。渓が使役する式神も、そういう素質のあるものには見抜かれることもある。もっとも、そう簡単に見破られない自信はあるが。
ものはためし。式神の寄代となる白い紙を丸め、息をかける。すると紙は一瞬空中でふわりと丸まって、かわいらしい白い犬の姿へ変化した。
阿吽の方割れ、阿だ。その姿が視えるものには、ポメラニアンのような白くてふわふわした犬に見えるだろう。式神は使役する人間によってその外見を変化させる。泉谷9代目の出す巨大な狼のような阿を思い出し、自分はまだまだだなと薄く思いながら、渓は羽取の横へ近づいた。
どうやら羽取は”視えない”ほうらしい。だからと言って出しっぱなしにして、他の生徒に感づかれるのも面倒だ。
『この匂いを覚えろ。』
渓が声を出さずに命令を出し、阿がうなづく。阿は羽取の周りをはふんはふんかぎまわり、渓の元へ尻尾を振って戻ってくる。どうやら臭いを覚えたようだ。
何気なく空を眺めてるふうを装って、阿を再び元の紙の姿に戻す。羽取先輩が登校の際あの高架下を通るのなら、途中までは渓と帰り道が同じだろう。放課後を待ち、生徒が散ってから阿に羽取を尾行させよう。渓本人が尾行るよりはいいだろう。
教室に戻ろうと立ち上がり、振り向くとそこにはまた二宮が立っていた。
「お前、今の犬…何?」
ばか。羽取の周りを囲んでいたゴシップ好きの生徒たちに聞き耳を立てられるのはマズイ。
「お前昨日だってそうだったろ、なんかアヤシイ札」
いいかけた二宮にラリアットを食らわす形で首に腕を絡め、そのままの体勢で校舎に戻る扉へと引きずる。
そのまま扉の中に入ると、外に漏れない程度、しかし怒りはばっちりとこもった声で渓が言う。
「いいですか、あなたに見鬼の能力があるのはわかりました。あなたが何者にせよ、これ以上僕の邪魔をしようとするなら」
「じゃ、邪魔なんてしてねーだろうが!昨日も今日も一昨日もちょっと話かけただけで」
「それが邪魔だというのです。」
ピシャリと言い切る。
茫然と、少し怒ったように困惑した二宮を残して、渓はその場を去る。
二宮。思い出した。
最初の文字に いろはにほへと を冠する術師の集団、【匂色機関】その筆頭泉谷。
続く陸原(ろくはら)、蛇草(はぐさ)、二宮(にのみや)、焔村(ほむら)、戸木(へぎ)、鳥落(とりおち)
…第四句目の術師、二宮家。
術師を代表する家系でありながら、欲望に走り敵である鬼の娘を娶った恥知らずな家系。
割とどこにでもある苗字のため、あまり意識していなかった。あの少年、二宮に術符が反応したのは、その鬼の子孫だからだ。鬼をせん滅する術師を養育する桜華学園に、鬼の血を引く生徒を入学させるなどとんでもなくばかばかしい、間違った行為だ。
二宮、彼がその二宮なら、確か彼の兄も教員としてこの学校にいるはずだ。
もし彼が僕の邪魔をするようなら、僕は二宮の血筋を許さない。第二句目、陸原の血を引く校長の思惑がなんであれ、筆頭泉谷の名にかけて---彼らを永遠にこの学園から追放してやる。
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須々木ピコリ(すずきぴこり)
年齢:
157
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女性
誕生日:
1867/04/01
職業:
機械惑星の歯車あたり
趣味:
細工・お絵描き・惰眠をむさぼる
自己紹介:
ものぐさ。
※ご高齢の方や妊娠中の方、お子様など体や精神力の弱ってる方は閲覧の際充分に注意してください。
※本品は食品ではありません。食べないで下さい。
※お肌に異常の現れた場合は、ご使用をお控え下さい。
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