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ビルの戦い
「おい、何だあれ…」
パトカーから身を乗り出した城島の眼に、着物姿の少年とそれをつかむ同じくらいの年の少年、そして一周り大きな青年らしき人影が見えた。城島たちの位置からは化け物と化した真木はシルエットにしか見えず、着物姿の少年がナイフのようなもの、もう一人の少年が斧を持っているということだけが目に入る。
「うぉおおおい鈴木!ガキの喧嘩だ、エモノを持ってるぞ!全力で止めるぜ!」
「おお!補導!補導っす!!」
勢いよくサイレンを鳴らし、少年たちの元へとパトカーを急がせる。
「そこのジャリども!喧嘩はやめーい!」
急に現れたパトカーに、着物姿の少年が何か言った。
サイレンにかき消され、声は聞こえない。
「何ィ?」
と身を乗り出した城島を急いで鈴木がひき戻したのと、それが窓の外に現れたのはほとんど同時だった。
「うわなんだこれ!!なんだこれ!!」
「化け物!化け物っす!!」
運転席に座っていた城島が、ほとんど鈴木を押しつぶす形で助手席のほうへ寄る。開け放した窓から、それが手を突っ込んでくる。
「あっち行くっす!!」
ぱんぱんぱん!
乾いた音が、夜の街にこだまする。
「鈴木、人間だったらどうする!」
とか言いながら、城島は素早く窓を閉める。それは銃弾など撃たれなかったかのように、懲りずに窓をたたき続ける。
「本部!こちら城島!化け物を発見した、応援頼む!」
言い終わったか終わらないかの瞬間に、窓ガラスが割れる。再び車内に手を突っ込んできた化け物が城島に触れそうになった時、化け物が叫び声をあげた。
着物姿の少年が、化け物に刀を突き立てている。
「っ…早く車を発進させてください!!」
パトカーにへばりつく真木に渓が護身刀を突き立てる。
「子供置いていけるか!」
パトカーから2人が飛び出してくる。鈴木がもう2発真木に銃弾をたたきこむ。
「ぐあっ!」
羽鳥が斧で鈴木の後頭部を殴りつけた。
「っ…やめろ!真木さんを撃つなっ!」
「鈴木!」
鈴木から大量の血液があふれ出す。気を失ったのか、鈴木はぐったりと目を閉じている。
「このっ…!」
城島が羽取を後ろ手に抑え、手錠をかける。
「鈴木!しっかりしろ鈴木!!」
城島に襲いかかろうとする真木。
すかさず渓が刀を突き立てる。
「ぎゃあああああああああああ!」
『威力が足りない…!』
もともと渓の術は結界などに適した術であり、攻撃に的してはいない。加えて先ほど受けた噛まれた首筋の血が、清めの力を半減させている。
攻撃は致命傷には至らず、真木は振りかえり渓に襲いかかろうとする。
先ほど噛みついた傷口を狙い、ジャブのように手を振り回してくる。
渓は気がついた。この化け物は、血の匂いに強く反応している。
血を流す鈴木と、それを抑える城島に結界を張る。
先ほど噛まれた部分から、札をはがす。
簡易的な結界だが、真木はノーガードの渓のほうを狙って来るはずだ。
「こっちだ!」
狙い通り、真木は渓のほうを追いかけてきた。
そのまま、雑居ビルの中へとおびき寄せていく。
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